ひずみゲージ全般FAQ

  • ひずみゲージとは何ですか。

    物体に発生する微小な伸び縮みを測定するセンサーです。100万分の1の分解能があります。電気の抵抗変化を利用しています。
    ほとんどが接着剤で対象物に直接貼りつけて使用します。一般用Fシリーズのひずみゲージは+150℃まで測定できます。接着型の高温用では+350℃まで対応します。
    ※より高温下では電気溶接で取付けるタイプもあり、+800℃まで測定可能です。

  • ゲージ率とは何ですか。

    ひずみとひずみゲージの抵抗変化の定数(K)で製造ロット単位で固有の数値を持ちます。
    ε=ΔL/L=(ΔR/R)/K
    の関係であらわされます。
    ε:ひずみ、ΔL:外力による変位量、L:物体の元の長さ、ΔR:ひずみゲージの抵抗変化量、R:ひずみゲージの抵抗値、K:ゲージ率

  • ゲージ率の補正方法を教えてください。

    測定値に「2/K(ゲージ率)」の数値をかけて補正します。
    たとえば、
    ひずみゲージのゲージ率(GAUGE FACTOR)が 2.13の場合は
    2/2.13=0.939を測定値に掛けます。
    (2は測定器に設定されたゲージ率です)

  • ゲージ長とは何ですか。

    ひずみゲージ受感部分の測定軸方向の有効長さで、ひずみゲージはこの間に発生するひずみを平均化して測定します。ひずみをスポット的に測るときはゲージ長の短いものを、複合材料などの測定には複合材料の平均的な特性を得る為にゲージ長は長いものを使用します。コンクリートの場合骨材の3倍以上のゲージ長を使用します。

  • ひずみゲージの熱出力とは何ですか。

    一般にひずみゲージを試験体に接着した場合は、外力によるひずみはなくても、試験体の温度が変わると試験体の線膨張係数により見掛け上、ひずみが生じ、抵抗変化を伴います。また、同時にゲージ受感部材料の抵抗温度係数により、抵抗変化を生じます。これを「熱出力」(温度による見掛けひずみ)と言います。
    たとえば、
    試験体が温度変化により自由膨張したとしますと
    ε=(α/K)ΔT+(βs-βg)ΔT
    ここで
    α:ゲージ受感部の抵抗温度係数
    βs:試験体の線膨張係数
    βg:ゲージ受感部の線膨張係数
    ΔT:温度変化
    K:ゲージ率
    ε:熱出力

    当社では、このβs、βgを考慮した上で、熱出力εが零になるように抵抗温度係数αを調整した自己温度補償ゲージを製作しています。
    βs、βg、αはいずれも定数ではないため、εを常に零にすることはできず、ある温度範囲でεが最小になるように調整しています。

  • 自己温度補償ゲージとは何ですか。

    規定された温度範囲で、特定の線膨張係数を持つ試験体に接着して用いる場合、ひずみゲージの熱出力が出来るだけ小さくなるように作られたひずみゲージです。
    当社では1℃当たりの熱出力ひずみが±1.8×10-6ひずみ以内に収めたものを自己温度補償ゲージと呼んでいます。

  • ひずみゲージの熱出力補正方法を教えてください。

    熱出力の補正はひずみゲージに添付されてくるデータシートの熱出力の近似式を使い行います。近似式の「T」の項に測定時の温度(T1)を入れるとその温度における熱出力が求められます。測定開始時の温度もこの近似式の「T」の項に温度(T0)を入れその温度における熱出力を求め、その両者の差(T1-T0)が測定開始時を基準とした場合の熱出力です。熱出力の補正はその値を測定結果から差し引くことになります。

  • 1ゲージ法3線式とは何ですか。

    ひずみゲージに付加した延長リード線が温度の影響を受けた場合、2線であれば温度に起因して出力が出てきますが、1ゲージ法3線式であれば温度の影響を受けても出力がでてこない測定方法です。測定中に温度変化がある場合は1ゲージ法3線式を使用します。

    測定用ブリッジ回路の組み方と結線

  • 1ゲージ4線式とは何ですか。

    1ゲージ法測定におけるリード線の影響を完全補償する測定方法です。
    リード線延長によるゲージ率変化の補正やリード線の温度影響も補正が不要です。
    またモジュラープラグによるワンタッチ結線が可能となり、配線の順序やはんだ付けによる作業の煩雑さがありません。
    使用できる測定器はデータロガーTDS-630、TDS-540、TDS-150、TC-32K、スイッチボックスSSW-50D、ISW-50G、IHW-50G、IHW-50H、FSW-10などです。

    1ゲージ4線式ひずみ測定法

  • アルミニウム用のひずみゲージはマグネシウム合金に使用できますか。

    アルミニウムの線膨張係数 23×10-6/℃、マグネシウムの線膨張係数 26×10-6/℃と、ほぼ同じですので測定中に温度の変化が無いような、一定温度の条件であれば問題なく使用できます。

  • ひずみゲージに裏表はありますか。

    ひずみゲージはベースの上に抵抗体があります、ひずみゲージの表はその抵抗体がはっきり分かる方です。また、ゲージリードがタブにはんだ付けされていますので、そのでっぱりがある側が表です。また、表側にはTMLのマークや、種類によってはゲージの軸数を示す数字が表示しています。

    Gauge1

    ポリエステルベースのPF、PシリーズのひずみゲージはTMLマーク,型名,ゲージ長を示す数字が正しく読める方が表になります。

    Gauge2

    また、ひずみゲージを接着するときはひずみゲージ裏面に接着剤をつけて測定対象物に接着します。

  • 静ひずみ測定器では1ゲージ法2線式は測定できないのでしょうか。

    可能です。ただし、端子B,C間をショートし、1ゲージ法3線式に設定して測定してください。

    B-DShort
  • プラスチック材料にひずみゲージは接着できますか。

    そのまま接着できる材料と、前処理を行って接着できるもの、接着できても弾性係数が低くひずみ感度が十分に出ないで測定できないものがあります。一覧表をご覧ください。

    略称 樹脂の名前 測定判定
    ABS アクリロニトリルブタジエンスチレン
    CR クロロプレンゴム(ネオプレン) ×
    EP エポキシ樹脂
    FRP ガラス繊維強化プラスチック
    NR 天然ゴム ×
    PA 66ナイロン
    PC ポリカーボネート
    PE ポリエチレン
    PET ポリエチレンテレフタレート
    PI ポリイミド
    PMMA ポリメタクリル酸メチル(アクリル)
    PP ポリプロピレン
    PS ポリスチレン(スチロール)
    PTFE ポリ四フッ化エチレン(ふっ素樹脂)
    PU ポリウレタン ×
    PVC ポリ塩化ビニル(硬質)
    SI シリコーン ×
    UP 不飽和ポリエステル

    測定の良否
    ○:処理なしで接着可能で測定可能
    △:接着には前処理が必要で測定可能
    ×:接着不可、または弾性係数が低く測定が困難 

  • 接着型のひずみゲージは何度まで測定できますか。

    350℃まで測定可能な接着タイプのひずみゲージと接着剤を揃えています。350℃を超えるひずみ測定の場合は溶接型ゲージを使用いたします。溶接ゲージはゲージ取付器(W-50RC)で溶接止めして、800℃まで測定ができます。

  • 疲労試験のように繰り返して測定する場合、ひずみゲージはどのくらい持ちますか。

    ひずみゲージは「試験規格NAS942」に基づいて疲労寿命試験がされています。汎用タイプのゲージでは±1500×10-6のひずみレベルで1×106以上の寿命があります。さらに耐久性のある特殊なひずみゲージDSFシリーズもあります。

  • 市販接着剤でひずみゲージを接着して測定してもよいですか。

    ひずみゲージ専用接着剤はゲージ特性を満足することを確認しているもので、ひずみゲージのクリープが出ないものです。市販品の接着剤ではその確認をしておりませんので、ご使用はお勧めできません。